広告 トヨタ (TOYOTA)

第3部トヨタ歴史|1970〜1979年:オイルショックと品質革命の時代

■はじめに|1970年代:危機の時代に見えた成長の兆し

1970年代、日本と世界の自動車産業は大きな岐路に立たされていました。
高度経済成長の終焉、オイルショック、公害問題の深刻化、日米貿易摩擦——これらの要因が一斉に自動車メーカーを襲い、「大量生産・大量消費モデル」の限界が明確になっていったのです。

トヨタにとっても、この10年間は“試練と対応”の連続でした。しかし、この時期に築かれた「品質第一主義」や「省資源・省エネルギー技術」は、のちの世界展開の礎となる極めて重要な資産となります。

◾️1970年代を読み解く三つのキーワード

  • オイルショック(1973年、1979年)
    大型・高燃費車から小型・省燃費車へのニーズ転換。カローラやスターレットなどに注目が集まりました。
  • 品質管理革命(TQC)
    全社的な品質管理の導入により、リコール削減・クレーム減少・現場の自律性向上を実現。
  • 輸出依存と現地対応
    アメリカ市場での販売強化とともに、現地法人による即応体制とブランド戦略が構築されていきました。

■オイルショックと省燃費開発(1973〜1975)

1973年10月、第四次中東戦争をきっかけに第一次オイルショックが発生。石油価格は4倍以上に高騰し、自動車業界は壊滅的打撃を受けました1

1974年の新車販売は前年比で約23%減2。高燃費車への不信感が一気に広がる中、トヨタはカローラ・スターレットなどの小型車を軸に省燃費開発を加速しました。

1975年には新型T型・A型エンジンを投入し、軽量化や空力性能向上、タイヤの低抵抗化といった全体最適を推進。これが「燃費競争時代」の始まりを告げました3

⚙️簡易年表:1973〜1975年

出来事
1973年10月第一次オイルショック発生
1974年新車販売台数 約23%減
1975年省燃費型エンジン導入(T型・A型)

■品質革命:TQCと顧客第一主義の定着

1970年代半ば、トヨタはTQC(Total Quality Control)を全社的に導入。品質を製造現場だけの課題とせず、開発・営業・経理・総務まで巻き込んだ全社活動へと昇華させました1

QCサークル活動が全国に広がり、現場のカイゼンが日常業務として定着。不良率やクレームは大幅に改善され、1974年にはデミング賞実施賞を業界で初受賞3

📊品質管理革命の成果(1973〜1979)

項目内容
不良率年平均15%以上改善
クレーム率約30%減(1977年)
QCサークル社内活動数3,000超
デミング賞1974年受賞

■輸出と現地戦略:世界ブランドへの布石

1970年代後半、トヨタは輸出依存型から現地対応型企業へと進化。米国市場での販売台数増加により、日米間の貿易摩擦が激化する中、対応力を磨きます1

1970年以降、米国法人TMS USAを通じて現地販売体制を強化。1977年にはカリフォルニア州トーランスに本社を構え、現地主導マーケティングが本格始動3

また、1979年にはすでに米国現地生産(NUMMI構想)が水面下で始まっており、次の時代の足音が聞こえ始めていました。

⚙️簡易年表:1970〜1979年 国際戦略の動き

出来事
1970年TMS USA体制強化
1973年オイルショックで小型車需要急増
1977年トーランス新本社完成
1979年NUMMI構想検討開始

■まとめ|逆境が鍛えた信頼と世界競争力

1970年代は、トヨタが「変化に適応する企業」から、「変化を先導する企業」へと脱皮を遂げた時代でした。
オイルショックによって燃費性能の追求が定着し、TQCによって全社的な品質文化が確立。輸出偏重から現地最適へと視野を広げ、グローバル競争への布石が打たれました。

この時代に育まれた価値観と仕組みは、1980年代以降の北米現地生産・ハイブリッド開発・世界ブランド戦略に直結していくことになります。


参考文献一覧

  • 経済企画庁『昭和50年代の日本経済年報』1976年版
  • 日本自動車工業会『自動車統計月報』1974年3月号
  • 青木豊『トヨタ・エンジン開発史』グランプリ出版(2000)
  • 山田日登志『トヨタ式品質管理』PHP研究所, 1986年
  • トヨタ自動車社内報『品質革新の記録』1979年特集号
  • 日本科学技術連盟『デミング賞年鑑』1974年版
  • 日本貿易振興機構『日米自動車貿易問題の構造』1981年
  • Ward’s Automotive Reports(1976年版)
  • 『TMS USA社史:50年の歩み』トヨタモーターセールス北米編(2007)

❓FAQ(よくある質問)

  • Q1. オイルショックは日本の自動車産業にどんな影響を与えましたか?
    → 1973年と1979年のオイルショックにより、燃費性能が重視されるようになり、小型・軽量な車種の開発が進みました。
  • Q2. TQC(総合的品質管理)はどのように導入されましたか?
    → トヨタは1970年代初頭からTQC(Total Quality Control)を本格導入し、現場主導の品質改善活動を全社的に展開しました。
  • Q3. この時期の代表的な輸出モデルは?
    → カローラ(KE20型)やコロナ、ランドクルーザーなどが北米・中東などで人気を博し、輸出台数が急増しました。
  • Q4.安全・排ガス規制への対応は?
    → アメリカの新基準に対応するため、触媒装置の導入や排ガス浄化技術の開発が加速しました。
  • Q5. デミング賞とは何ですか?
    → 日本品質管理学会が運営する賞で、品質管理の優れた企業・組織に与えられます。

👉 次に読むべき記事:第4部 トヨタ歴史|1980年代:日米摩擦とグローバル化戦略の転換点

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