クルマの偉人伝 4｜オリバー・エバンス🚂⚙️蒸気で走る夢を見た、アメリカ自動車史の影の巨人

🔧 1. 生涯と人物像

オリバー・エバンス（Oliver Evans, 1755–1819）は、アメリカ合衆国デラウェア州に生まれた独学の天才発明家・技術者です。鍛冶屋の見習いからスタートしながら、やがて工場自動化や蒸気機関の革新で歴史に名を刻みました。

彼の人生を貫くテーマは「効率化と自動化」、そして「蒸気の力で世界を変える」という信念でした。

1805年、フィラデルフィア港湾局の依頼でエバンスが建造したのは、水陸両用の自走式浚渫車両「Oruktor Amphibolos（オルクター・アンフィボロス）」

これはアメリカ大陸で初めて「蒸気で自走する車両」が公開された歴史的瞬間でした。

水上移動に関しては完全な証拠が乏しく、短期間の使用にとどまりました。

エバンスは1780年代に穀物製粉工場の完全自動化に成功。アーキメディアン・スクリューやバケットエレベーターを用い、世界初の連続生産ラインを実現しました。

この発明は後の大量生産の概念に直結し、フォードの流れ作業方式にも通じます。

当時主流だったワットの低圧型に対し、エバンスは小型・高出力な高圧蒸気機関を追求。移動式輸送機械にとって不可欠な要素を実現しました。

著書『The Young Mill-Wright and Miller’s Guide』は、アメリカ技術者のバイブル的存在でした。

エバンスは度重なる特許侵害との闘いに直面しながらも、アメリカの特許制度整備に貢献。商業的な成功には恵まれませんでしたが、「アメリカのワット」と称され、その功績は後の技術発展の土台となりました。

彼は「エンジンで走る車」の構想を、19世紀初頭にすでに実現しようとした先駆者。蒸気自動車と自動化工場という二つの分野で、「未来を先取りした技術者」でした。

自動車史・産業技術史における真の原点として、その名はもっと知られてしかるべきです。