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Vol.9 アメリカの自動車歴史 2000年代|あの頃のアメリカ車、どこへ消えた?姿を消した懐かしのブランドたち 🚗

■ はじめに

「オールズモビルって知ってる?」って聞いても、最近の若い人は首をかしげるかもしれません。でも、ちょっと前まではアメリカの道路を走り回っていた、歴史ある自動車ブランドだったんです。

2000年代って、振り返ってみるとアメリカの自動車業界にとって本当に激動の10年間でした。あのGMが倒産するなんて、2000年の時点で誰が想像できたでしょうか?そして、長年愛されてきた数々のブランドが、まるでドミノ倒しのように次々と姿を消していった...。

今思い返すと、あの時代はSUVが大ブームで、街中をでかいハマーH2が走り回ってました。ガソリンが安かった頃の話ですが、まさかあのハマーまで消えてしまうとは。

なぜこんなことになってしまったのか?長い間アメリカ人に愛され続けてきたブランドたちは、いったいどんな運命をたどったのか?実は、その背景には原油価格の高騰やリーマンショックだけじゃない、もっと複雑な事情があったんです。

この記事では、そんな「消えてしまったアメリカ車ブランド」の物語を、当時の状況を思い出しながら振り返ってみたいと思います。きっと「あー、そういえばこの車あったな」って思い出すブランドがあるはずです。

■ 本編

🏭 21世紀スタート:まだ余裕があった頃の話

2000年に入った頃のアメリカって、まだITバブルの余韻が残っていて、自動車業界もそれなりに調子が良かったんですよね。GMは相変わらず世界一の自動車メーカーだったし、フォードもクライスラーも、まさか10年後にあんなことになるとは夢にも思っていなかったでしょう。

ところが、この時期に早くも「消えるブランド第1号」が出てしまいました。それがプリムス(Plymouth)です。

プリムスって、1928年からクライスラーが展開していた大衆車ブランドだったんですが、2001年にひっそりと姿を消しました¹⁰。73年間も続いたブランドなのに、意外とあっさりした終わり方でした。理由は単純で、同じクライスラーのダッジと商品がかぶりすぎちゃったから。「プリムス・ネオンってダッジ・ネオンと何が違うの?」みたいな状況になっちゃって、お客さんも混乱するし、会社としても効率が悪い。だったらダッジに統一しちゃおう、ということになったわけです。

プリムス・ネオン
英語版ウィキペディアのGrey26さん, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で

でも、プリムスの終了は序の口でした。本当の激震が来たのは、GMがオールズモビルの廃止を発表した時です。

オールズモビルって、実は1897年創業のアメリカ最古参ブランドの一つだったんです¹。107年間ですよ!人間で言えば、ひいひいおじいさんの代から続いている老舗中の老舗。それが2004年に完全に消えてしまいました。

⚙️ この時期の販売データを見てみると

アメリカ全体の車販売ビッグ3のシェア日本車のシェア
2000年1,718万台約68%約24%
2001年1,720万台約65%約26%
2002年1,681万台約63%約28%

この数字を見ると、じわじわと日本車に押されていたのが分かりますね。

一方で、GMは「サターン」っていう面白いブランドを育てようとしてました。これ、「日本車に対抗できる小型車を作ろう」ってコンセプトで1990年に始まったブランドで²、当時としては珍しく独立したディーラー網を持っていて、接客サービスにもすごく力を入れてました。まあ、結果的にはこれも後で消えちゃうんですが...。

🚀 2000年代中盤:油断してたら大変なことに

2003年頃から状況が変わり始めました。イラク戦争が始まって、原油価格がグングン上がり始めたんです。2003年には1バレル31ドルだったのが、2005年には56ドル、2007年には95ドルまで跳ね上がりました³。

「ガソリン代が高くなったから燃費のいい車がほしい」って考えるのは、当然の流れですよね。ところが、アメリカのメーカーは大きなSUVとかピックアップトラックばかり作ってた。「燃費?そんなの気にする必要ないでしょ」って感じで。

この頃、フォードの「マーキュリー」ブランドも苦しんでいました⁴。マーキュリーって、フォードとリンカーンの中間グレードとして1938年から続いてたブランドなんですが、だんだん存在意義が曖昧になってきてたんです。「フォードよりちょっと高級」って言われても、お客さんからすると「だったら最初からリンカーン買うか、フォードで十分」って思っちゃいますよね。

GMのポンティアックも厳しい状況でした⁵。ポンティアックは1926年から続く老舗で、「We Build Excitement」をスローガンに若者向けのスポーツカーを作ってたんですが、若い人の車に対する価値観が変わっちゃった。昔は「カッコいいスポーツカーに乗りたい」だったのが、「燃費が良くて実用的な車がいい」に変わってしまったんです。

📊 原油価格とメーカー株価の関係を見てみると

原油価格GM株価フォード株価
2003年$31/バレル$45$12
2005年$56/バレル$31$8
2007年$95/バレル$28$7
2008年$147/バレル$4$2

この表を見ると、原油価格が上がるにつれて株価が下がっていくのが手に取るように分かります。まさに反比例ですね。

🌍 2008年:すべてが崩れ落ちた年

そして2008年。リーマン・ブラザーズが破綻して、世界中が大パニックになりました。アメリカの自動車業界にとっては、まさに「終わりの始まり」でした。

車が売れない、売れない。2008年の下半期なんて、本当にひどい状況でした。GMの販売台数は前年比で30%近く落ち込んで、フォードもクライスラーもボロボロ。そして2009年、ついに信じられないことが起こりました。

GMとクライスラーが破産法を申請したんです⁶。

GMが破産って、日本で言えばトヨタが倒産するようなもんですよ。世界最大の自動車メーカーが「もうダメです」って白旗を上げるなんて、誰が想像できたでしょうか。

🔧 あの時の時系列を振り返ると

  • 2008年11月:ビッグ3の社長が議会に「助けて」とお願い
  • 2008年12月:ブッシュ大統領がGMとクライスラーに174億ドル緊急融資
  • 2009年4月30日:クライスラー破産法申請
  • 2009年6月1日:GM破産法申請(負債1,728億ドル!)
  • 2009年7月:両社とも政府管理下で再スタート

この混乱の中で、歴史あるブランドたちが次々と「お疲れさまでした」状態になってしまいました。

サターンは2010年に終了⁷。20年間の「日本車キラー」戦略も、結局は日本のメーカーに負けてしまいました。皮肉なことに、GMの株主にはトヨタも入ってたんですから、なんとも複雑な気分です。

🔧 さよなら、愛しのブランドたち

ハマーの最期 ハマーって、もともと軍用車だったのを一般向けに改造したブランドでした⁸。あのゴツい見た目で、アメリカンドリームの象徴みたいな存在だったんですが、時代が変わっちゃいましたね。「地球環境のことを考えろ」って世論が厳しくなって、燃費の悪いハマーは完全に時代遅れ扱い。

実は中国の会社が買収しようとしたんですが、中国政府が「ダメ」って言って、結局2010年に消滅してしまいました。

その他の中小メーカーも大変だった 大手メーカーがあの状況ですから、小さな会社はもっと大変でした。テスラは2003年に設立されて、2008年にロードスターを出しましたが、まだまだ「電気自動車って本当に大丈夫?」って感じでした。

テスラ・ロードスター
Tesla Motors Inc., Copyrighted free use, ウィキメディア・コモンズ経由で

イーグル(Eagle)なんていうブランドもありました¹¹。これは1988年から1998年まで10年間だけ存在した、ある意味「幻のブランド」でした。クライスラーがAMCを買収した時についてきたブランドで、三菱の車をベースにした車を売ってたんですが、「これって三菱車じゃん」ってバレバレで、あっという間に消えちゃいました。

📈 消えたブランドたちの最終成績表

ブランド終了年続いた期間最高年間販売台数最後の年の販売台数
プリムス2001年73年75万台(1973年)約17万台
オールズモビル2004年107年110万台(1985年)約29万台
ポンティアック2010年84年70万台(2007年)約17万台
サターン2010年20年24万台(2007年)約13万台
ハマー2010年18年7万台(2006年)約4千台
マーキュリー2011年73年18万台(2007年)約9万台

■ まとめ

こうして振り返ってみると、2000年代のアメリカ自動車業界って本当にドラマチックでした。21世紀が始まった頃は「アメリカの自動車産業は永遠に不滅だ」って感じだったのに、10年後にはあの有様。

でも、考えてみれば当然だったのかもしれません。お客さんが「燃費のいい車がほしい」って言ってるのに、「でっかいSUVを買えよ」って言い続けてたんですから。時代の変化について行けなかった結果が、あの大混乱だったんでしょう⁹。

消えてしまったブランドたちは、それぞれに長い歴史と多くのファンを持っていました。オールズモビルの107年間、ポンティアックの84年間...これって、人間の一生よりもずっと長い時間です。そんな歴史あるブランドが消えてしまうのは、やっぱり寂しいものがあります。

ただ、この大変動があったからこそ、アメリカの自動車業界も生まれ変わることができたのかもしれません。今ではテスラが世界的なメーカーになってるし、GMやフォードも電気自動車に本気で取り組んでいます。

あの頃消えてしまったブランドたちも、きっと今のアメリカ車業界の発展を天国から見守ってくれていることでしょう。「俺たちの犠牲を無駄にするなよ」って言いながら。


📚 参考文献

  1. GM Corporation. "Annual Report 2004." General Motors Company Archives.
  2. Saturn Corporation. "Saturn: A Different Kind of Company." GM Heritage Center, 1990-2010.
  3. U.S. Energy Information Administration. "Petroleum & Other Liquids Data." Department of Energy.
  4. Ford Motor Company. "Mercury Brand History." Ford Corporate Archives.
  5. Pontiac Division. "Pontiac History and Heritage." GM Heritage Center.
  6. U.S. Bankruptcy Court. "In re General Motors Corp., Case No. 09-50026." Southern District of New York, 2009.
  7. Automotive News. "Saturn Brand Timeline 1990-2010." Crain Communications Inc.
  8. GM China Group. "Hummer Brand Divestiture Records." GM International Operations.
  9. Federal Reserve Economic Data. "U.S. Automotive Industry Statistics 2000-2009."
  10. Plymouth Division. "Plymouth Brand History 1928-2001." Chrysler Corporate Archives.
  11. Eagle Division. "Eagle Brand Operations 1988-1998." Chrysler Historical Foundation.
  12. Bureau of Labor Statistics. "Employment in Motor Vehicle Manufacturing." U.S. Department of Labor.
  13. Ward's Automotive Yearbook. "Annual U.S. Sales Data 2000-2009." Ward's Communications.
  14. J.D. Power and Associates. "U.S. Automotive Market Share Reports 2000-2009."
  15. Environmental Protection Agency. "Light-Duty Vehicle Standards Timeline." EPA Office of Transportation.
  16. Congressional Budget Office. "The Troubled Asset Relief Program for the Automotive Industry." CBO Report 2010.
  17. Society of Automotive Engineers. "Technical Papers on American Automotive Industry 2000s." SAE International.

❓ よくある質問

Q1: プリマスが消えたのって、そんなに珍しいことだったの?
A1: そうですね、73年も続いたメジャーブランドがいきなり消えるのは珍しいことでした。でも、同じような車を複数のブランドで売るより、一つにまとめた方が効率的だったんです。お客さんも混乱しなくて済みますしね。

Q2: オールズモビルってそんなに歴史があったの?知らなかった
A2: 107年間ですからね、本当に長かったんです。日本で言えば明治時代から続いてたようなもんです。でも最後の方は他のGMブランドとの違いが分からなくなっちゃって、「オールズモビルを買う理由」が見つからなくなってしまったんです。

Q3: サターンの「日本車キラー」戦略って何?
A3: 1980年代に日本車がアメリカで大人気になって、GMが「これはマズい」って思って作ったのがサターンです。日本車みたいに燃費が良くて品質も良い車を作って、日本車に対抗しようとしたんです。でも結果的には...うまくいかなかったですね。

Q4: ハマーって軍用車だったの?
A4: そうです、もともとは「ハンヴィー」っていう軍用車でした。それを一般の人でも買えるように改造したのがハマーです。すごくゴツくて大きくて、「俺はアメリカ人だ!」って感じの車でした。でも燃費が悪すぎて時代に合わなくなっちゃいました。

Q5: 今のアメリカ車業界は元気なの?
A5: 以前とは全然違いますが、それなりに元気ですよ。テスラみたいな新しいメーカーも出てきましたし、GMやフォードも電気自動車に本気で取り組んでます。あの大変な時期があったからこそ、今があるのかもしれませんね。


次に読むといいかも: 2010年代のアメリカ車業界復活劇や、テスラがどうやって成功したかについても面白い話がたくさんありますよ! 🚗⚡

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