現存するアメリカの自動車メーカー完全ガイド【2025年版】

■はじめに

アメリカ合衆国の自動車業界を見渡すと、実に多彩な企業が存在していることに驚かされます。老舗のビッグスリーから、世界を震撼させたEV新興勢力、さらには知る人ぞ知る商用車専業メーカーまで、その多様性はまさにアメリカ産業の真骨頂と言えるでしょう。

私がこの業界を追いかけ続けている中で感じるのは、2020年代に入ってからの変化の激しさです。2024年の販売を、各メーカー別(販売数の多い順)にみると、GM:SUV「トラックス」「エンビスタ」が伸びて、4.3%増。トヨタ:SUV「RAV4」、ピックアップトラック「タンドラ」が伸びて、3.7%増。フォード:ピックアップトラック「マーベリック」「Fシリーズ」が伸びて、4.2%増。ホンダ:乗用車「シビック」、SUV「CR-V」が好調で、8.8%増。ステランティス:ピックアップトラック「ラム」や乗用車「チャージャー」の販売が堅調に推移する一方で、テスラは駆け込み需要の恩恵もなく10.1%減で10カ月連続のマイナスとなったなど、好調と不調が企業により明確に分かれる状況が続いています。

本記事では、読者の皆さんが「今、アメリカにはどんな自動車メーカーがあるのか?」という素朴な疑問にお答えすべく、2025年現在も事業継続中の全メーカーを徹底的に整理しました。単なる企業名の羅列ではなく、それぞれの特色や強み、市場での位置づけも含めて、実用的な情報をお届けします。

■本編

🏭 アメリカ自動車業界を牽引する主要グループ

ゼネラルモーターズ(GM):4ブランド体制で幅広くカバー

通常、ゼネラルモーターズ(GM)、フォード、ステランティス(旧クライスラー)が指されますという「ビッグスリー」の筆頭格に位置するGMは、現在4つのブランドを展開しています。

📋 GM傘下ブランドの現況

ブランド名主力車種カテゴリー市場での位置づけ
シボレー(Chevrolet)乗用車・SUV・ピックアップ大衆ブランドの王道
キャデラック(Cadillac)高級セダン・SUVアメリカン高級車の代名詞
GMC(GMC)SUV・商用トラックプロユース重視
ビュイック(Buick)中高級セダン・SUV中間層向け上質ブランド

特に注目したいのは、GMが電動化に本格的に舵を切っている点です。キャデラックでは「LYRIQ」をはじめとするEVラインナップを順次投入し、2030年までに全車種を電動化する計画を発表しています。EV販売が過去最高となったGMが前年同月比5.9%増という2025年8月の実績からも、その取り組みが実を結びつつあることが分かります。

フォード:商用車とSUVに特化した戦略転換

1903年創業のフォードは、近年大きな戦略転換を図っています。乗用車分野から一部撤退し、利益率の高い商用車とSUV分野に経営資源を集中させているのです。

フォードグループの現在の構成

ブランド名展開車種備考
フォード(Ford)ピックアップ・SUV・商用車F-150が北米トップシェア
リンカーン(Lincoln)高級車・高級SUV中国市場重視の展開

フォードもEVが牽引し4.9%増だったという最新実績が示すように、同社のEVピックアップトラック「F-150ライトニング」は市場で着実な地位を築いています。また、商用向けのEVバン「E-トランジット」も宅配業界での需要を取り込んでいます。

ステランティス:多国籍グループの米国法人

2021年に誕生した多国籍企業ステランティスは、ステランティスは国際企業ですが、クライスラー系のブランドが米国拠点で継続していますという形で、アメリカ市場でも重要な存在です。

ステランティス北米ブランド一覧

ブランド名主要カテゴリー特徴・強み
クライスラー(Chrysler)セダン・ミニバンファミリー層向け
ダッジ(Dodge)スポーツカー・マッスルカー高性能路線
ジープ(Jeep)SUV・オフロード車オフロード性能No.1
ラム(Ram)ピックアップトラック商用・重作業用途

ジープブランドは特に世界的な認知度が高く、SUV=ジープと言われるほどの存在感を誇ります。また、ピックアップトラック「ラム」はフォードF-150に次ぐ北米第2位のシェアを維持し、商用分野での信頼性が高く評価されています。

🚗 独立系メーカー:革新を牽引するEV勢力

テスラ:業界に革命をもたらしたパイオニア

テスラは完全独立系のEVメーカーで、グループ企業には属していません。2003年設立以来、電気自動車専業メーカーとして前例のない成功を収めてきました。

2024年米国EV販売は130万台超え。販売トップ10、1位はテスラモデルY、2位モデル3という実績が示すように、アメリカEV市場ではまだまだ圧倒的な存在です。ただし、テスラは駆け込み需要の恩恵もなく10.1%減で10カ月連続のマイナスという最近の動向からは、競争激化の影響も見て取れます。

テスラ現行ラインナップ

  • モデルS:フラッグシップセダン
  • モデル3:大衆向けセダン
  • モデルX:高級SUV(ガルウィングドア)
  • モデルY:コンパクトSUV
  • サイバートラック:近未来デザインのピックアップ

その他注目の独立系EVメーカー

📊 主要独立系EVメーカー比較表

メーカー名設立年本社所在地主力製品・特徴
リヴィアン(Rivian)2009年イリノイ州EVピックアップ・Amazon配送車
ルシッド・モータース(Lucid Motors)2007年カリフォルニア州高級EVセダン(最長航続距離記録保持)
フィスカー(Fisker Inc.)2016年(再設立)カリフォルニア州デザイン重視EV・ファブレス戦略
ボリンジャー・モータース(Bollinger Motors)2015年ミシガン州商用・民生EVトラック
カルマ・オートモーティヴ(Karma Automotive)2014年カリフォルニア州旧フィスカー資産継承・PHEV

リヴィアンは特に注目度が高く、米国リヴィアンも採用!テスラ充電規格NACSが急速にEV業界標準仕様へという形で業界標準化にも積極的に関わっています。

🚛 商用車・特殊車両の専門メーカー群

大型トラック業界の主要プレーヤー

アメリカの商用車市場では、長距離輸送用の大型トラックが中心となっています。この分野の競争構造は乗用車とは全く異なり、専業メーカーが独自の地位を築いています。

🏭 主要商用車メーカー一覧

メーカー名親会社・グループ主要製品市場シェア・特徴
ピータービルト(Peterbilt)PACCAR大型トラックフレイトライナー・トラックスに次ぐ規模の貨物自動車メーカーである
ケンワース(Kenworth)PACCAR大型トラック北米市場では首位となるフレイトライナー・トラックスに続き、シェア第二位
ナビスター・インターナショナルフォルクスワーゲン傘下トラック・スクールバス北米でのトラックシェアはトップであるフレイトライナー・トラックス(ウェスタン・スター・トラックス)、パッカー(ケンワース、ピータービルト)、ボルボ・グループ(ボルボ・トラックス、マック・トラックス)に続き第4位
フレイトライナー(Freightliner)ダイムラー・トラック北米大型トラック(米国製造)北米市場トップシェア
マック・トラックス(Mack Trucks)ボルボグループ大型トラック(米国製造)建設・廃棄物分野に強み

ピータービルト・モータース・カンパニー(Peterbilt Motors Company)は、アメリカ合衆国テキサス州デントンに本社を置くトラック製造会社である、ケンワース(英: Kenworth)は、アメリカ合衆国の貨物自動車メーカーであり、そのブランド名。姉妹部門であるピータービルトと共に現在はパッカーの子会社であるという両社は、PACCAR傘下で北米トラック市場の重要な一角を占めています。

スクールバス・特殊車両メーカー

📋 特殊用途車両メーカー

メーカー名所属グループ専門分野
ICバス(IC Bus)ナビスター傘下スクールバス
トーマスビルト・バス(Thomas Built Buses)ダイムラー・トラック北米スクールバス
ブルーバード・コーポレーション(Blue Bird Corporation)独立系スクールバス(老舗)
オシュコッシュ・コーポレーション(Oshkosh Corporation)独立系軍用車(JLTV)・消防車

EV商用車の新興勢力

商用車分野でも電動化の波が押し寄せています。

⚡ EV商用車メーカー

メーカー名設立・事業開始特徴
ワークホース・グループ(Workhorse Group)独立系電動配送バン(軽量EV)
ライトニング・イーモーターズ(Lightning eMotors)独立系EV商用車(改造ベース多)
モーガン・オルソン(Morgan Olson)ワード・トラック傘下ステップバン・配送車

🌍 業界再編の波と将来展望

最近の大きな動き

⚙️ アメリカ自動車業界重要年表(2020年代)

出来事対象企業影響・意義
2021年ステランティス成立(FCA+PSA合併)クライスラー系ブランド欧米統合企業の誕生
2021年リヴィアン上場リヴィアンEV新興企業の株式市場デビュー
2021年ナビスター、VW傘下入りナビスター欧州資本による商用車再編
2022年テスラ、年産100万台突破テスラEV大量生産体制確立
2023年GM、全車EV化計画発表GM既存大手の電動化宣言
2024年2024年米新車販売は新型コロナ禍後最多業界全体市場回復の鮮明化

競争環境の変化

関税コストの増加が業績を圧迫する中、製品戦略や生産体制の見直しで影響の軽減を図る姿勢を示したという状況からも分かるように、アメリカメーカーは貿易環境の変化への対応も迫られています。

GMは、売上高は471億ドル(前年同期比1.8%減)、調整後の利払い前・税引き前利益(EBIT)は30億ドル(31.6%減)、純利益は19億ドル(35.4%減)となったといった業績面での試練がある一方で、生産や価格戦略の見直しで、関税影響の3割以上を緩和するといった方針も示しているなど、着実な対応策も打ち出されています。

■まとめ

2025年現在のアメリカ自動車業界は、まさに変革期の真っ只中にあります。伝統的なビッグスリー(GM、フォード、ステランティス)は、それぞれ異なる戦略で電動化とグローバル化に対応しようとしています。GMは全ブランドでのEV展開、フォードは商用車特化、ステランティスは国際的な技術統合という具合に、各社の個性がより鮮明になってきました。

一方で、テスラを筆頭とする独立系EVメーカーは、従来の自動車産業の常識を次々と覆し続けています。特にリヴィアンやルシッドといった新興勢力は、それぞれ異なるセグメントでの革新を追求し、業界全体の技術進歩を加速させています。

商用車分野では、PACCAR(ピータービルト・ケンワース)を筆頭とする専業メーカーが堅調な事業を継続しており、さらにEV化の波に乗った新興企業も参入を果たしています。

今後数年間は、これらの多様なプレーヤーがどのように競争し、協調していくかが業界の行方を左右することになるでしょう。読者の皆さんにとって、このダイナミックな変化を追いかけていくことは、きっと刺激的な体験となるはずです 🚗

FAQ(よくある質問)

Q1. 現在のアメリカ「ビッグスリー」とは具体的にどの会社ですか? A1. ゼネラルモーターズ(GM)、フォード・モーター・カンパニー、そしてステランティス(旧クライスラー)の3社を指します。ステランティスは国際企業ですが、アメリカ国内でクライスラー、ダッジ、ジープ、ラムの各ブランドを展開しています。

Q2. テスラは大手自動車メーカーの系列に属していますか? A2. いいえ、テスラは完全な独立系企業です。どのグループにも属さず、電気自動車専業メーカーとして独自の路線を貫いています。

Q3. アメリカにはどのような商用車メーカーがありますか? A3. 大型トラック分野ではPACCAR(ピータービルト、ケンワース)、ダイムラー(フレイトライナー)、ボルボ(マック・トラックス)、ナビスター(現VW傘下)が主要企業です。スクールバス分野では、ICバス、トーマス・ビルト・バス、ブルーバード・コーポレーションなどが活動しています。

Q4. 外国企業の子会社もアメリカのメーカーに含まれるのですか? A4. 本記事では、資本は外国系でも、開発・生産拠点がアメリカ国内にあり、主にアメリカ市場向け製品を手がけている企業を「アメリカメーカー」として扱っています。例えば、ダイムラーのフレイトライナーやボルボのマック・トラックスなどがこれに該当します。

Q5. これらの企業の今後の見通しはどうですか? A5. 電動化、自動運転技術、中国メーカーとの競争激化などにより、業界全体が大きな転換期を迎えています。既存大手は技術投資を加速し、新興企業は革新的なアプローチで市場開拓を進めており、今後5-10年で業界地図が大きく変わる可能性が高いと予想されます。

参考文献一覧

  1. ジェトロ「2024年米新車販売は新型コロナ禍後最多」- 最新販売実績データ¹
  2. マークラインズ「米国新車販売台数 2025年」- メーカー別詳細統計²
  3. ジェトロ「米系自動車メーカー3社、2025年4~6月期決算」- 財務データ³
  4. EVcafe「2024年米国EV販売は130万台超え」- EV市場動向⁴
  5. ウィキペディア「ピータービルト」- 企業概要と歴史⁵
  6. ウィキペディア「ケンワース」- 設立経緯と現況⁶
  7. ウィキペディア「ナビスター・インターナショナル」- 事業規模と市場地位⁷
  8. ウィキペディア「アメリカ車」- 業界全体の構造⁸
  9. 各メーカー公式サイト - 製品ラインナップ・企業情報
  10. 業界専門誌「Automotive News」- 最新業界動向
  11. 米国運輸省統計局 - 公式統計データ
  12. フォーチュン500企業リスト - 企業規模比較データ
  13. 各種業界レポート・分析資料 - 市場予測・競合分析
  14. 投資家向け決算資料 - 各社財務状況
  15. 専門メディア報道 - 最新技術動向・提携関係

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